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2012年 06月 17日

源兵衛川の衝撃

雨の週末なので珍しく家にいる。今年は梅雨らしい6月である。本格的な夏を控えているので雨でも憂鬱ではない。梅雨明の予定を考えているとワクワクする。そんな訳で珍しくブログ更新。梅雨明け目指して1年半も前から記録したかった三島の源兵衛川のことを書こう(笑)。有名な川なので沢山ブログアップされてるが。
さて源兵衛川の何がそんなに素晴らしいかって?建築家による景観デザインが介入しているにもかかわらず、バナキュラーで造りすぎない親水空間がすごいのだ。水路が中心になった街づくりのお手本がここにある。残念ながら可航水路ではないのだが、水路と街の親密性は尋常ではない。こんな高度な景観デザインが建築家+市民団体主導で実施されここまで育っていることに驚愕した。建築家がこのような形で都市や環境に貢献出来るのだという成功事例を体験でき勇気づけられた。
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ぼくが源兵衛川に出会ったのは、2011年の4月にBankARTスクールで「大岡川を往く」という川繋がりの講師陣を6人ほどお呼びし、週一でレクチャーいただく有料企画に参加したのがきっかけであった。特別メディアを賑わす売れっ子が登壇するわけでもなく、安くない受講料をとられるので、受講生が6人ほどしかいない企画であった。これは失敗したかなと思ったのだが、蓋を開けてみれば素晴らしい水辺哲学をお持ちの講師陣とゆっくりお話する時間が持て、水辺好きには大変得した企画であった。その中で、この計画に携わったアトリエトドの松井正澄さんにプロジェクト紹介をいただき、GWに早速足を運んだのがきっかけであった。その後、あまりの素晴らしさに夏休みにも再度訪問し大変すばらしい水辺環境であることを改めて認識した次第であります。ランドスケープの人達にはバイブルみたいな計画なんだろうが建築屋の僕は恥ずかしながら知りませんでした。

この三島という場所は、富士山の湧水に恵まれた水網都市である。他に宮川、桜川、御殿川と計4本の水路があり、水路に囲まれた3つの島から町が生じたことから「三島」という説もあるとか。なんと奈良時代から農業用水路として利用されており、街と水路との関わりは極めて古いそうだ。今回紹介する源兵衛川は自然河川ではなく、延長1.55kmの湧水を利用した農業用水路をカスタマイズした水路なのです。湧水源のある駅前商業地から住宅地をとおり、水田地帯の貯水池までの変化に富んだ親水環境を形成しています。昔は川に沿って家を建て、川の水を家に引き込み、川に張り出した「川端」で水を汲み洗い物をしていたそうです。いまの法規制ではいずれも不可能なことばかり。
高度成長期に工場の地下水汲上により湧水が枯渇し水路は生活から遠ざかり、いつしか生活排水路となり汚染され、市民の意識も遠ざかってしまったようです。そのようなすっかり使われなくなってしまった水路を再利用しようという機運が高まり、平成2年度より農水省の補助事業によりプロジェクトが発足したそうです。約7年もの歳月と14億という低予算でこれだけの水辺環境が整備されたとのこと。設計はあの象設計集団を独立したクラスターアーキテクトが中心になりチームを組んで実施したようです。設計者の一人である松井氏が言うには、一人の三島市役人の個人的な熱意により始まったプロジェクトのため、ほぼ手弁当でライフワークとして計画に携わったと言っていました。松井さんたちはまず時間をかけて地域の歴史や習慣を調査し、街を十分にサーヴェイし計画の糸口を探していったそうです。

その中で下記の3つの原則を立て合意形成をはかり、設計を開始したそうです。(スクール時配布資料より抜粋)
1)場に発生する様々な問題を掘り起こし、特性を読み取りながら、川と人の新たな関わりを「かたち」として提示する。

2)創ることだけを前提とせず、保全、復元、改修、創造など、場に則した柔軟な対応をはかる。

3)古くから屋敷の石積みや敷石、護岸などに用いられてきた溶岩を、地域の景観を形作る素材として活用し、川全域に多様な使い方をする。また、製品化する場合は他の川にも利用できるよう汎用性を持たせる。


昨今、山崎亮的な「つくらないこと」が持て囃されていますが、ほとんどの設計者は何らかの形のある空間を提示する責任を負うべき職能であるわけで。上記のような「つくること」と「つくらないこと」の狭間の状況をまず定義し、創りすぎない事を宣言している事にこの計画の本質があるように思います。このように計画の定義を明確に提示することにより市民、行政、企業の3者がぶれることなく具体的に協調してゆく概念と手法を提示できることが設計者の力量の一つであるように思いました。
民間建築ばかりやってる私が言うのもなんですが、協調関係の中で時間をかけて作られた環境は完成後も市民の手で大切に整備され水辺文化を育成して行けるのだと思います。もともとは市民の手で自主的に整備されていた水路でしたが、いつからか維持管理を行政に押し付けるようになってしまったことが川に人が寄り付かなくなってしまった大きな要因ではないかとの解説が印象的でした。煩わしい自治管理も楽しみのひとつとして享受できるようになった時に良質なコミュニティーが生まれ文化が育まれるのでしょうね。
現地を訪れてみると、水路マニアは脈が上がってしまうくらいの刺激的なシークエンスのオンパレード。元は水流が管理された農業用水路であるとはいえ、よくぞここまで密度の高い水辺空間をコントロールできるものだなと思う反面、デザインせず住人の自主的な演出にゆだねている部分も多分にある絶妙なバランスに唸ってしまいます。先の原則の中に書かれている「つくること」と「つくらないこと」が、しっかりリアルな素材屋ディテールに落とし込まれていることに強い感動を覚えました。もちろんハードの環境だけでなく、その環境を最大限引き出し、使い倒している地元の子供たちや市民の振る舞いも絵に描いたような素晴らしい光景でした。フェンスが無いと子供が川に落ちて危ないなどと行政にクレームをつける輩もいないのでしょう。また既得権を尊重しているのか、ゆるい法規制も一躍買っているように見えましたが実情はどうなんでしょうね。
設計者の松井氏が、「ほとんど手弁当で携わったので行政や住民もわりと設計者の好きなようにやらせてくれたんです、工事費も少なかったので結果的に既存利用をとことん検討せざるを得なかったとのが良い結果をもたらせた」と言っていたのが印象的でした。
土木工事でこの14億という数字が高いのか安いのかよくわかりませんが、横浜大岡川の河口にある立派なボードウォークが10億以上と聞いています。屋形船が夕方乗降に使っている意外、人の気配がなく、カヤックもボートもつけることが出来ない立派な見るだけ親水空間とそんなに変わらない金額で、三島市の確かな象徴となり、観光資源となっている水路環境は14億で整備され愛されているのです。
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川沿いの素敵なカフェdilettante cafe。テーブルが水に浸かっている!

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余談ですが最近読んだまちづくり系の本に「つくること、つくらないこと」というのがあります。とても面白いのでお薦めです。対談の人選が秀逸です。

これからの季節、東京からの日帰り圏内の薦めの水辺です。三島駅の北側には現代美術家の杉本博司がデザイン監修を行なったIZUPHOTO MUSIAMも昨年よりオープン。一日おなかいっぱいに遊べます。
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◆参考
http://blog.enviro-studio.net/?eid=217 知り合いではないが高知工科大学の先生のブログ。源兵衛川についてすごくよくまとまってます。

 当時一緒に受講したzaikabouさんのブログ
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by canalscape | 2012-06-17 11:51 | 運河・河川
2012年 06月 05日

水陸両用車は本当に水辺を活性化させるのか?

先日、といっても3月下旬だが3/20から4/8にかけての水陸両用バスの社会実験に参加することができた。
趣旨は「東京湾の水辺活性化」とのことだが、はたして「水辺」は活性化するのか?

今回のコースは港区港南に残る元造船所のスロープを利用しての実験。浜松町のバスターミナルを起点に東京タワーをかすめ芝浦を経由、港南のスロープより入水。レインボーブリッジのループ周辺を回遊し、またスロープから陸上に戻り浜松町に戻るというコース。
最大の見せ場はスロープからバスが入水する瞬間。水面に浮いてしまうと遊覧船となんら変わらない感覚。あまり艇速は出なさそうだし波があるときは進まなそう。これは外から見てたほうが面白いのではないか?バスが海に浮かんでいる光景は最初はぎょっとする。
このバス窓が無いので冬場は走行中かなり寒い。採算が取れる40人の乗客数を確保しつつ、営業用水陸両用バスの法定基準排水量の5トン未満に抑えるべく軽量化したことが要因らしい。ガラスの窓をつけず、屋根のみで窓を開放しておくと船体部より上部は容積に含まれず排水量にカウントされないらしい。ぎりぎり5t未満の4.8トンをキープ。運転手は小型船舶2級(特定)と大型バス免許で操縦可能とのこと。
外観はご覧のとおりかなり特徴的。かっこいいものではない。エンジンは天ぷらの排油を使ったバイオマスディーゼルでエコ度を強調していたが、そんな手間のかかることをやって採算取れるのだろうか?

まあいってみればこれは水辺の「客寄せパンダ」だよな。大阪では物珍しさから都市観光の人気アトラクションとなっている。集客力もあり岸からこいつを発見するとみんなそれなりに盛り上がり大阪の水辺風景として特徴づけることに成功しているようだ。
だがしかし、これは単に物珍しいから乗ってみようというモチベーションではないか?一回乗ったらそれ以上のテーマがあるとも思えないため、色物アトラクションという印象をぬぐえない。確かに「都市型観光アトラクション」としては、成功するだろう。しかし大義名分である「東京湾の水辺活性化」には特に繋がらないと思えてならない。
理由は簡単である。肝心の水辺を素通りしてしまうからである。このバスがかかわる水辺は入水用スロープのみである。しかも他に上陸できる場所が無いため同じ場所に戻ってくるしか無い。そしてこのスロープは人気のない立ち入り禁止の港湾エリアの一角にあるのだ。いったいどこに水辺が活性化する余地があるのだろうか?今後このスロープを多拠点化して水上ネットワークを築くとでも?数ある防災船着き場も満足に使えていないのに?
土木工事が発生するスロープ設置にいったいいくらかかるのか?水陸両用バスを一台作るのに2億って言ってたかな。せいぜい2台で同じ水辺をぐるぐるやるのが限界だろう。いろんな意味で広がりを感じない試みであると思った。他にも江東区がスカイツリー観光用に水陸両用バスを運行させるらしいが同様に集客はあるが、たいして水辺の活性化には繋がらないのではと。唯一スロープの周りにカフェでも作って入水見学できるとそれなりに賑わいそうな気もするが。どちらにしてもそう何度も見たいものではないし継続的な水辺文化への波及効果は考えにくいと思うのだがどうだろう?まあ、何をもって水辺の活性化とするかだが。ガンダム作って人が集まりゃ活性化だとか言ってるのと同レベルのような聞こえるが。

非常時の活躍も期待されているようだが水面に降りられる場所が限定されてるのにどう活躍するのだろう?堤防が決壊し浸水した場合は有効かもしれませんが。そんなことより今ある防災桟橋を日常的に開放し、一般の舟運を活性化することのほうがはるかに重要で有益な試みのような気がするのだが?
ツアーでの説明もはとバス的な見どころ紹介と特殊車両についての説明に終始していた。
都市の水辺の状況や水陸両用バスがいかにして水辺を活性化するのかというもっとも重要な説明が抜け落ちているように思う。それに取柄は特殊車両なんだからこの車両のメカニズムの説明をバス降りてから実物見ながら説明するべきと思うがな。

まあ苦言ばかり言っていても仕方ないので、前向きな発言もしておこう。水陸両用バスをやるなら、高い金出して新造するより、世界各国の旧型軍事用水陸両用車両を集め改装し観光アトラクションにしたほうが安いしよほど面白いよ。もともとの発想は軍事目的だからね。道路交通法とか緩和する必要があるかもしれないがそのくらい何とかしたら?
性能を追求した軍事車両はデザインもかっこいいものが多い。そんな趣向なら乗ってみたいね。

◆参考
水陸両用車とは?

水陸両用車協会

東京ダックツアープロモーションビデオ
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by canalscape | 2012-06-05 00:58 | 舟運・桟橋