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カテゴリ:水辺のレストラン( 6 )


2011年 07月 30日

カフェ・ムルソー  浅草リバーサイドカフェ

浅草の隅田川左岸、吾妻橋と駒形橋の間に隅田川を一望できる素敵なカフェがあるのをご存じだろうか?入口は細い路地に面しており通りがかりの観光客が来るような場所では無い。趣味のよい看板を確認し2層吹き抜けのピロティーの階段を上がると素晴らしい眺望が広がっている。だいたい店名からしてそそるではないか、ムルソーといえば僕が大好きな、カミュの「異邦人」の主人公の名前だ。なんとなくタンジールの裏路地のカフェ、ジブラルタルを望むなんていうアウトローなノリなのだろうか?と期待してしまう。ちなみに隣はバックパッカー向けのゲストハウスだぜ。
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まだスーパー堤防が整備されていないこのあたりはカミソリ護岸なのだが、2階のカフェからはまったく眺望を遮るものがなく、かつフルオープン式の折りたたみサッシを使用しているため、気候の良い時期は実に開放的な空間となる。3階もcafé & barになっているようでこちらも申し分の無い川風景を堪能できるのではないでしょうか。
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川から船でこの辺りの風景を眺めていると、小規模な雑居ビルがカミソリ堤防に面して建ち並ぶ風景が特徴的であることに気づく。小じんまりした個人経営の特徴ある店舗に向いた規模だと思うのだが、ご多分にもれず川に開いた店舗などほとんど見当たらない。このカフェはこの立地や街区の特性をうまく引き出したスペースになっている。欲をいえば、敷地とカミソリ護岸の間に管理通路があるため、今一歩水面が遠く感じることと、メニューやインテリアデザインに、もう少し特徴があるといいのにな~と思ってしまう。かなり手堅い感じなので、店名から勝手に妄想を膨らませていると期待を外してしまう。そうは言っても十分素晴らしいロケーションなので、思う存分川風を楽しめますが・・・。でもやっぱり護岸の上に川床を張りださせたいな。水との距離が格段に向上する。
水上バス乗り場も近いのでクルーズとセットで楽しんでみたらいかがでしょう。
→お店のHPはこちら
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by canalscape | 2011-07-30 00:38 | 水辺のレストラン
2011年 06月 13日

神田川高架下レストラン

御茶ノ水駅から秋葉原に向かう途中の昌平橋袂に高架下の倉庫をレストランに転用した施設があるのをご存知だろうか?JR東日本が場所を提供し、地元のホテル聚楽がオペレーターとしてレストランを Chinese CafeCave Bar和食スペイン料理と4店舗運営しているようだ。各店舗は2階建てになっており、天井は高架のスケルトンのアーチがむき出しに見えている。奥に進むと隣接している神田川が一望でき、小さいながらもテラスが設置されている。テラスからは何重にも鉄道が交差する特徴ある神田川の渓谷や昭和的バラックの建築群を望むことが出来る絶好のロケーションである。
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中央線の始発駅であった旧万世橋駅跡でアーチとレンガ造りで有名な高架下倉庫の一角。設計は東京駅の設計で有名な辰野金吾という大変素晴らしい都市資産に恵まれたロケーションなのです。しかしながら、お店のHPからはこれらの貴重な環境について積極的に説明されておらず、店舗構成も特徴を最大限生かしているとは言いがたくちょっと残念です。もっと川を感じられる設計は可能なのに。じつに惜しい。
そうは言っても一般的には十分素敵なお店ですが(笑)

余談だが、4月のよく晴れた気持のよい土曜日のランチ時、誰もテラスを使っていなかったので、一人でテラス席を指定して気持ちよさそうに食事してやった。そしたら昌平橋からそれを見た人たちが入店してきて後からぞろぞろテラスに出てきたぞ。誰も使ってないと躊躇するのか、それとも誰かが気分よさそうにしていると環境の良さに気がつくのか?定かではないが、外人だったら間違いなくテラスから席埋まるはずだけどな。日本人はまだまだテラスの使い方に消極的ですね。店員も客が指定しない限りテラス席に案内することはまず無いよね。
サービスも煩雑になるし、暑かったり寒かったり風があったり虫が飛んできたり時には匂うこともあり面倒なのだが、テラスに出るということは街や川に活気を与える最も効果的な行為の一つだと思うんですよね。この神田川にしても、観光船が通過するときは単純にテラスの人も船の人もテンションが上がると思うのだが。そんな訳でちょっと無理をしてでもテラスがあれば出ることを奨励したいのです。水辺のテラスが集客に繋がることが明らかになれば、川に面して店を構えるスタイルも定着してきます。街は僕らユーザーの行動が反映される時代になってきたのですから。積極的に川辺に出てツイートしよう!
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(下写真)2年ほど前から不定期の観光船が数多く見られるようになってきた。photo by @gonzke
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現在、万世橋駅跡にあった交通博物館跡地が再開発されています。おそらく高架下倉庫も飲食店モールとして有効に使われるのだろうと思います。神田川に対しても大々的に開かれることを期待しましょう。神田川のにぎわいと、クルーズ船の盛り上がりが断然違ってくるはずです。
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by canalscape | 2011-06-13 00:31 | 水辺のレストラン
2011年 06月 12日

Canal Café 外濠とボート小屋の記憶

飯田橋駅前のマックが無くなりCanal Caféが増築されたとのうわさを聞き、ちょっと遠いいのだが、遅いランチに何年ぶりかで訪れてみる。その日は、初夏を思わせる陽気で水辺で涼みたいと思ったのもあるのだが。
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外堀の名残である水面牛込濠に面したレストラン+カフェ。元は1918年に東京に初めて造られた貸しボート場「東京水上倶楽部」がルーツのようです。ボート用の桟橋と小屋が増築され1996年に水上レストラン「Canal Cafe」としてオープン。公益性の高い水辺に民間の施設を新設することはほぼ不可能なのだが、昔の施設の延長線上で既得権を有効に利用した飲食施設なのでしょうか?
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いずれにしても、都市の共有財産である水辺を有効に活用し、営利事業ではあるが、不特定多数に公開しているスタンスは素晴らしいことと思います。先代から受継いだ資産の価値を認識し、ステキなカフェに仕立てて街に貢献している状況は、天王洲の倉庫を転用したTYハーバーさんとも共通するものがあると思いました。こんな広い施設をメンテナンスし運用していくのは余裕と高い教養が無いとなかなか出来ない商スタイルだなと感心します。この日は晴天だったこともあり次々と多国籍なマダム達が入店され、いろんな言語が聞こえてきます。在日外国人の間では有名なんでしょうかね。都市のオープンスペースの使い方は今でも圧倒的に欧米人の方が積極的な気がします。皆さん水辺のテラスが大好きですよね。それから平日だからかもしれないが女性が圧倒的に多い。

この水辺のレストランでは、飲食だけでなくボートを使った水上音楽祭などもやっていた。近所にあの法政大学の陣内秀信先生の研究室もあり、院生が中心となり、2009年まではsotobori canal wonder というボートを利用した水上音楽祭などの企画を立てていたようです。今は形を変えてsotobori canaleという組織で継続してるようですね。
このようにリサーチやドローイングなどの提案に留まらず、実際に水面を使って見せているところが素晴らしい。これからの時代は新たに都市開発することよりも、既存の空間を見直しどのようにポテンシャルを引きだし使い倒すかが問われてくるように思います。このような小さな水面利用の経験の積み重ねがユーザーである都市生活者に水辺のリアリティーを感じさせるのではないかと思います。

都心のど真ん中にいながら、適度な中央線の通過音以外は静かで涼しげなオアシス。癒されました。
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by canalscape | 2011-06-12 01:04 | 水辺のレストラン
2010年 10月 30日

水上BAR SUNSET2117

夕食に関西ドボクの皆さんの段取りで元遊郭を転用した料亭にて宴会。なべ料理を堪能した後、建物を見学。明治の遊郭建築を堪能。周辺は赤線地帯。関東とはまったく違う商形態に唖然。その後失礼とは思いながらも難波の甘味屋に向かう皆さんからは離脱し、一人念願の尻無川の水上バーへ向かう。去年も水都大阪で訪れたが、夜時間が無く、店に入ることが出来なかった。やっとリベンジの時が来たのだ。

本日3回目の大正駅・尻無川アゲインだ。大正駅から徒歩5分ほどでこの倉庫を転用したリバーサイドBARに到着。目印は四角いトラス橋と入口の防潮扉だ。この一帯はSUNSET2117をはじめ、潮気のある趣味性の高い店が何店か並んでいる。このちょっとしたコミュニティー感がいいんですよね。
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入口はこの素っ気なさ。
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船外機とパドルのディスプレーがお出迎え。
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トレーラーハウスなんかもあってやばい雰囲気。
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わくわくしながら桟橋へのタラップを渡る。
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意外と普通のスタッフ。わざわざ来た経緯を店員さんとお話し、ボンベイサファイアを一杯オーダー。
親切に隅々までご案内いただき、お店の歴史なんかも聞かせていただき来てよかったです。
スポーツ用品店を経営していた初代オーナーは亡くなっており、現在は息子さんがオーナーとのこと。
初代オーナーはあの鳥人間コンテストを企画した人だと言っていた。またコアな船好きだったとのこと。
見れば解りますよ、この雰囲気。
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やはり大阪でも水上スペースはここしかないようです。もちろん船で来店出来るところもここだけ。夢のような水辺のスペース。作りすぎていない放置感が水辺の隠れ家風でいいですね。既得権のなせる技でしょう。

ベネチアの水上タクシーと同じ木造船でのチャータークルーズもやってるそうだ。これも乗ってみたいねー。もちろんマイボートで遊びに来てもいいんですよ。
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去年の水都大阪の対象地区から外れていたこの水域。こんな水域こそが僕らが求めている水辺なのに
やはり行政主導やアーバンデザイン的な表向きの水辺との乖離は大きいことを実感。こんなフリーダムな水辺は消えゆく運命にあるようだ。
ちなみに対岸はこんな瓦倉庫の並ぶ水辺。
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大正駅周辺や尻無川流域は何度来ても面白い。今日のクルーズ後もみんなで散策したのだがまだまだ足りない。いつの日かまた来よう。
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by canalscape | 2010-10-30 20:29 | 水辺のレストラン
2010年 06月 14日

アキバリバーサイドテラス@神田川

ぼくが勤務している会社の仕事として4年前から関わっていた建築プロジェクトの紹介です。ですので、個人ブログにはあまり詳しくは書けないので概要と水辺に関するポイントのみ紹介させていただきます。
これはアキバ駅前の老朽化した某ホテルの建て替え計画。駅前のT字路の突き当たり、しかも裏には神田川、近くに人道橋、防災船着場、対岸に神社というこの上ない好立地の計画。地図参照。

BPAのような都心の水辺利用を実践するグループに参画している者にとっては願ってもないチャンスである。ご存じの通り、現在都市河川に対して、建物と街は閉鎖的に出来ている。本計画の建て替え前の建物も同様であった。
今回、大手デベロッパーのような護岸改修も含む大規模な計画ではなく、一般的な都市河川沿いの中規模な敷地ではあるが、何か出来ることがあるはずだ。神が与えてくれた大切なチャンスと思い全力で取り組んだつもりだ。
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奥行き2.5m、ガラス手摺の広くて開放的なテラス
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川の対岸に柳森神社。江戸時代から立地している。橋は歩行者専用橋
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駅前T字路突き当り
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2階へ誘導するピロティー
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上記5点 撮影:淺川 敏

僕ら水辺好きにとってはこの敷地から真っ先に思いつくアイデアは下記の点だ
1.護岸を超えた高さにテラスを設置しそれに面して飲食店用テナントスペースを確保しよう。(実現)
2.必然的にテラスの設置階は2階。1階から2階のテラスまで川との出会いをドラマチックに演出できるような動線としよう。1階の道路側にはゆったりとしたピロティーを設け、駅前の喧噪を和らげるセミパブリックな空間を設けよう。(実現)
3.ホテル客室は極力川に向け、水面を眺めやすいように足元から開いた縦長の窓にしよう。(実現)
4.出来れば、将来川沿いに遊歩道が出来たときに表通りと繋がるよう、貫通通路を設けておこう。(実現断念)
5.川に面した照明計画を行い、美しい夜の水辺を演出しよう。(コスト削減により断念)
6.テラスを使いこなせるテナントを誘致しよう。(ノータッチ)
7.リバーサイドの特徴を生かしたホテルの企画
ざっくり、以上のような重要項目が思い浮かんだ。

アキバというクールジャパンを代表する都市の川辺である、本来世界をターゲットにブランディングしなければならない水辺計画のはずだが・・・。
しかも、LEDとネオンギラギラの駅前側とは対照的に神田川の対岸には柳森神社という由緒正しき社が鎮座する神田らしさが残る静かな街区。そしてその横には歩行者専用橋であるふれあい橋があり、喧噪のアキバから静かな神田にワープできる。
この秋葉原の神田川エリアは東京都の観光戦略上重要なエリアである。景観条例により外壁の色やサインの規制、緑化等は指導されているがその他の具体的なルールは設定されていない。これでは建て替え時にまた水辺に閉じた建築が出来てしまう可能性がある。このエリアの建て替えが始まる前にルール化しておかないと手遅れにならないか?建築の建て替え周期は早くて25年だ、この機会を逃すと軽く30年は改善されないこととなる。
肝心なのは、川辺に空間的に開くことなのだが。

この神田川だが、ここより上流の水道橋で日本橋川に分岐しているのはご存じだろうか?
神田川、日本橋川、隅田川を航行すると、ぐるっと一周出来てしまうのです。しかも航行時間は2時間から2.5時間という、クルーズにはちょうど良い長さ。しかもそれぞれの川には特徴的なすばらしい観光コンテンツ?が揃っています。詳細はまたの機会に紹介するとしますが、このコースを予約制でクルーズ出来るツアーもあるのでトライしてみてはいかがでしょうか?ちょうど、このホテルの少し下流側に和泉橋防災船着場があります、JR秋葉原駅、日比谷線秋葉原駅、ヨドバシカメラの目の前という好立地。この桟橋からも乗船できるのではないでしょうか?この桟橋、残念ながら普段は使用不可。もっと開放すればいいのに。千代田区のイベント以外では貸してくれません。
そのほかにも神田川を航行する船舶はある。なんと唯一の定期航路としてBARGE船が航行しているのです。LOB13と同系の尾竹型90tクラス。ボートで曳航してもらうタイプの
正当派艀です。この華奢なサイズは神田川や小名木川など東京の運河を航行できるよう設計されたようです。神田川にはジャストフィットなのです。この艀どこから来てどこへ行くのか?そんなところに関心が出てきたら、運河マニア中級者ですね。上流の日本橋川との分岐点近くの水道橋に千代田区・文京区の清掃事務所があり、収集された産業廃棄物が艀に積み込まれるのです。艀は神田川を下り、隅田川を経由し、豊洲運河から湾岸の最終処分場中央防波堤に向かっているようです。しかも、ちょうどこのホテルの前で下流から昇ってきた空舟を曳航する中型タグボートと、上流から下ってきた満載船を曳航する小型のタグボートが艀の交換をする場所なのです。
要はここより上流は川幅が狭くなるので小型で機動性の良いボートに切り替えることと、すれ違いが出来ないためと思われます。そんな素敵なボートショーを見ることが出来るのだが、残念ながら写真なし。たしか午後一くらいだったと思ったが。今度撮りに行こう。このテラスからそんな貴重なショーを鑑賞しながら午後の紅茶をいただけるのですよ。自画自賛だが奇跡の眺望ですよ。
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橋のたもとに和泉橋防災船着き場が見える
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このテラスだが、奥行きが2.5mもあり長さも2店舗合わせて30mもある大テラスです
4人掛けのテーブル席をゆったり置ける奥行きです。これだけ大きなリバーサイドテラスは都内ではTYハーバーくらいではないでしょうか?
手すりは眺望を妨げないよう強化合わせガラスとしています。怖いくらいの解放感です。
本当は、店舗側もフルオープンのサッシとし内部と一体化出来るとよかったのですが、数々の現実の壁が立ちはだかり諦めました。しかも、デニーズ側は厨房を川側に持ってきてしまいました。厨房がばかでかいのでここしかスペースが無かったのですが・・・。厨房でか過ぎます。普通の飲食店ならこんなことにはなりません。残念。でも僕は期待してますよ、デニーズ葉山店のように大々的に使ってくれることを。

このテラス、駅側の喧噪がウソのような静かな環境です。一つの建築の表と裏でこうも空気が変わるものかと感心します。川風が気持ちいい。これこそが都市のエッジたる都市河川のポテンシャルなのだと思う。川の向こうに柳森神社が迎えてくれるところがすばらしい。向こう側にはいわゆる神田的街並みが続いています。
このように半屋外的で建築と街の中間領域であるテラスやピロティーは建築・店舗・街・水辺をドラマチックにつないでくれるのです。
大阪では2009年の水都大阪に絡めた社会実験、北浜川床プロジェクトとして実験的に実施していた。これは、堂島川に面した北浜エリアの飲食店の川側に、敷地境界線を跨ぎ、公共スペースであるカミソリ護岸の上にテラスを仮設し、店舗機能を拡張しようという試み。既存の店舗に仮設でテラスを設け、安価に川床の環境を体験できるようにした試みだ。週末はすべて予約で埋まってしまう大盛況だったようで、期間を延長して今年度も継続実施している。このような、体験してみないとわからない空間はいくらパースを描いても伝わらないんです。やはりリアルに体感してもらわないと。去年僕も現地を視察しました、これはその時の水都大阪見学レポート。このアキバのリバーテラスはこのような試みを通常の建築法規の中で実現させ、テナントに手間暇かけて営業してもらうというかなり実験的な試みなのです。そこには、一筋縄にはいかない数々の現実がありました。
1.テラスの建設費とその費用対効果(事業者)
2.テラスのクリーニングとメンテナンス。(事業者・テナント)
3.テラスの賃料と天候や季節に左右される使い勝手(テナント)
4.煩雑なサービスオペレーション(テナント)
5.テントや家具などのテナント工事費の発生(テナント)
6.神田川は汚染されていて臭うとの先入観。
7.こんな河川に造っても誰も使わないという先入観
以上のようなネガティブな問題が発生してきましたが、設計側の思いを汲み取ってくれたのか、最終的には事業者様の判断でテラス設置の費用を出していただけました。また、テナント側にもなんとかテラスを使うことで合意いただけました。テラス使用料はどうだったのかは言えませんが、なんとか合意でき嬉しかったです。
結果的に、目標として掲げていた項目も半分以上は実現。テナント選定には設計はタッチ出来なかったな。組織同士のプロジェクトって分業されてしまい、なかなか口出せないんですよね。あと川側のライトアップも当初はブルーのLEDを手すりにライン状に入れる予定だったが・・・コスト削減項目に。
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そんな訳で、何かとハードルが多かったこのアキバのリバーテラスの試みですが、これからが勝負です。テラスはただのデザインではありません。使ってナンボの空間です。そして売り上げに貢献出来なくてはなりません。売り上げがあがり、お金もちゃんと廻っている施設にならないと、次が続かないのです。みんな見てるんですよ。費用対効果はあるのかと。お客さんが使ってないと、周辺に広がっていかずいつまでたっても川は閉鎖的なままとなります。肝心なのはこれからなのですが、企業内設計者は何もできず運営をゆだねるだけという悲しい現実。そんな訳で、無理してでもみなさんに使ってみてほしいです。

【予告】7月10日に神田川・日本橋川一周クルーズを開催します。
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by canalscape | 2010-06-14 01:40 | 水辺のレストラン
2010年 01月 24日

T.Y.HARBOR (水辺のレストラン#1)

新年明けましておめでとうございます。今年も水辺特化でぼちぼちやりたいと思いますのでよろしくお願いします。

さて以前より「水辺のレストラン」についてリサーチしてみようと思っており、ぼちぼち記録していたのだが塩漬けになっていた。今年の新企画として徐々にblog upしたいと思う。

「水辺のレストラン」第1回目は品川天王洲のT.Y.HARBOR天王洲アイルという約22haの人工島の一角に立地している。
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天王洲は元々は江戸時代後期に築かれた第四台場があった場所である。今でもシーフォートスクエアに台場の石垣が露出した場所が残っている。再開発が着手される89年までは一大倉庫街であった場所である。
その後高度成長期の生産物流拠点からアメニティー産業への産業転換の動きもあり、85年に天王洲の再開発を推進する「天王洲総合開発協議会」を三菱商事、中川特殊鋼、寺田倉庫など地権者22社で発足させ、民間主導による天王洲アイルの再開発が着手された。時代はいわゆるバブル絶頂期、世間では「ウォーターフロント」や「アーバンリゾート」というキーワードがもてはやされ、工場や倉庫街だった湾岸の再開発計画が目白押しであった。天王洲再開発の中心施設である「シーフォートスクエアー」も、モノレール駅に隣接し当時はやったアトリウムを中心にしたゾーニングでホテル、劇場、ショッピングモール、オフィス、タワーマンションの複合施設でありその時代を象徴したような計画である。水際にはボードウォークを設置し東京のウォーターフロント開発の先鞭となったデザインであった。そのフォトジェニックな景観はドラマや雑誌の撮影にはうってつけのロケーションであった。96年には島の7割が完成したのだが、時代はバブル崩壊の影響を受け、パースに描いた湾岸再開発は停滞気味となる。当初描かれていた海上交通構想は影をひそめ、思ったほどのにぎわいが生まれなかったようだ。それもそのはず当時はモノレールの駅がある他はバスしか交通手段がなく、周辺の再開発も進まなかったことなどから回遊性が生まれず、外部から人が流れてこなかったことが要因のようだ(現在はりんかい線の駅あり)。そんなこともあり、しばらくの間バブルの遺産のような扱われ方もしていた。しかし、小泉内閣による規制緩和処置や経済的に安定していたこともあり2001年頃から、湾岸エリアに巨大マンションが続々と計画され、第2のウォーターフロントブームが訪れた。そしてわずか5年ほどの間に、このエリアの定住人口が急増し、湾岸風景も激変させてしまった。天王洲アイル周辺にも巨大マンションが続々と竣工し、子供からお年寄りまで幅広く開かれた湾岸エリアとなった。しかしもと倉庫街のこのエリア、もちろん商店街もなければ既存のコミュニティーも存在しない。先住民も団地の住人くらいである。そんな既存の都市文化が全く存在しないエリアに急激な人口増加がおこったのだ。
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さて本題だが、倉庫をリノベーションした水辺のレストランTYハーバーはこんなエリアに立地している。シーフォートスクエアーなどの大型複合施設とは一線を期した独特の空気感を持った街区を形成している。これは、再開発以前から存在している倉庫をレストランやスタジオ、オフィスなどに転用し、倉庫街として発展してきた天王洲と運河の歴史を継承しているからである。欧米の港湾再開発手法ではロフトリノベーションは当たり前のように実施されているが、スクラップアンドビルドがメジャーな日本では希少な開発手法である。地震が多く高い耐震性が求められることと、土地の値段が異常に高く、代わりに高い容積率を認めている都の方針に合わせると、どうしても新築し高層化しがちなのだが、寺田倉庫は容積率の消化を捨てて、ロフト文化の継承を選択しており文化レベルの高さは大変なものだ。ヨウジ・ヤマモトオフィスなどの高感度なテナントが誘致しているのもそんな企業戦略の一環なのだろう。
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景観的にも、水門や優雅な歩行者専用鉄橋ふれあい橋、広いウッドデッキ、運河の交差点もあり、まさに運河の銀座4丁目交差点状態だ。目の前の運河を東京海洋大のカッターが通過したりもする。
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またTYハーバーでは、運河に面してゆったりとしたテラス席を多数有しているだけでなく、新人の現代アートの展示も定期的に行っているほか、天王洲エールという地ビールの製造もおこなっている。また、目の前に桟橋があり、船でレストランに訪れることも可能。海外では当たり前にボートでレストランを訪れるが、東京湾でそれが出来るのは、夢の島マリーナと八景島マリーナ以外の単独のレストランではここと芝浦のiju25、横浜新山下のタイクーンコンチネンタル、千葉の保田漁港しか存在しないという大変お粗末な状況のなかで、このサービスは画期的だ。
そしてとどめはアネックスの
水上ラウンジWATER LINEだ。海外の水辺に行くと普通に存在している水上レストランだが、日本ではとんとお目にかかれない、理由は法規制で規制されているからだ。それではなんでTYハーバーはこんな特殊なことが出来たのか?
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2000年代の湾岸タワーマンションラッシュによる第2の湾岸開発の機運にのり、東京都は平成17年(2005年)に「運河ルネッサンス構想」を発足。品川・天王洲地区はその第1号モデル地区として認定された。この構想、天王洲地区の特徴である運河を有効に利用できないかというもの。「眺める水辺から使う水辺への転換」である。江戸から高度成長期までは運河は舟運で大賑わいであった。舟運利用の必要が無くなった現在では工事用船舶か屋形舟が航行する以外はほとんど利用されていない。
それでは、土地の所有者が目の前の運河に船着き場を作ったり水上レストランを作ったりすれば徐々ににぎわいが生まれるのではと思う方も多いと思うのだが、現在の法規制ではほぼ不可能であった。運河は道路と同様公共地であるため、都や国の所有エリアであり
水上バスなど公共交通の桟橋のようなもの以外は民間が事業のために水面を使用することは認められていない。屋形舟の船宿などで水上に建築が飛び出しているものがあるが、あれは船の係留同様既得権で、現在では既存不適格建築となっているはずである。建て替えると違法建築となるため、改修を延々と繰り返すしか無いのではと思う。
運河ルネッサンスとは既得権の無い新規の民間事業者が事業のために公共スペースである水面を借りられる規制緩和制度なのである。また、既得権と違い現行法規がしっかり適応されてしまうのがみそだ。開発申請から始まり、建築基準法、消防法、保健所許可はもちろん、船舶安全法、港湾法が合わせて適用されてしまう。地上の法規と水上の法規、船舶の放棄が覆いかぶさってくる。ふたを開けてみると気の遠くなるような官庁協議が発生してしまうようである。前例のないものに対して必要以上に慎重になるのは日本の役所の特徴なので仕方ないのだが、この場合は建築企画課や建築指導課の陸上管轄の部署と港湾局や国土交通省運輸局という水面や船舶を管理している部署にまたがってしまっているのが最大の問題だ。今まで棲み分けがあったところに、文字通り海のもの(船)とも山のもの(建築)とも言い難い計画が持ち込まれると、縦割り社会の中では混乱を引き起こすようだ。白黒つけにくい問題に対しては海側の論理と、陸側の論理を両方満たさなくてはならない羽目になる。そんなことの繰り返しで、設計期間と建設費は膨大な数字となる。そこに費用対効果というバランスは存在しない。水面利用へのロマンと意地だけである。並みの事業者では実行できないシステムだ。ちなみに、レストラン船を係留したまま営業することは禁止されているそうだ。航行していれば「船舶」として扱われ、レストラン船というカテゴリーに入れてもらえる。
係留したままでは、船舶とは言えず、かといって建築にもなれない空間となってしまうそうだ。建築になるためには、国土交通大臣の認定による杭に固定されなくてはならないようだ。もちろん2方向避難とバリアフリー法も適用ですよ。刻々と変化する水位に対して車いす対応のスロープを設置するなんて大変ですね。以上当事者へのヒアリングではなく、この件の記事や論文からの情報なので真意は定かでないが、そんな複雑な経緯を経て水上ラウンジや桟橋が実現しているようだ。物理的にはさらっと出来そうなものだが、法的な調整や遊漁船業者との調整は大変ややこしいらしい。水辺に対する強い信念が無くては実現しなかった食空間だ。こんなことを踏まえて訪れると、よりこの特殊な空間を楽しめると思う。

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ちなみに、食事はカリフォルニア系。ちょっと高めだが、味はすごく良かったです。テラス席はいつも外国人でいっぱいです。ピーク時は予約しないと席とれないと思います。

◆予告
2月7日(土)東京文化発信プロジェクト室主催でこの素敵な水上ラウンジで水辺を使ったアートの可能性についてのトークイベントがあります。BPAもホスト側にて参加します、よろしければご参加ください。
詳細はこちらのHPを参照ください。
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by canalscape | 2010-01-24 23:50 | 水辺のレストラン