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カテゴリ:書籍・映画・イベント( 12 )


2013年 12月 23日

船の上の映画会

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あっという間に年末です。なんと今年の新年の挨拶以来、丸一年このブログを更新していなかった事に気づきなんとか年末に一本くらい書こうと思い書いてますw。去年の9月に水辺荘を開設し、いろいろ書くことあったはずなのにSNSに写真などアップしてコメントのやり取りするとなんか書きたい欲望がなくなっちゃうのね。でもSNSってどんどん新しい記事に埋もれてっちゃうので、ほんとに記録しておきたい事はやはりブログにメモしておかないとなーと反省。貴重な水辺体験が本ブログ上は空白の1.5年となってしまいました。来年はブログへの記録をしっかりやっていきたいなと思いましたが、どうなることやら・・・。

さて、今年の水辺荘活動も一段落しクリスマス休暇をわりとのんびり楽しもうかと思っていた矢先、水辺仲間がとっても刺激的な水辺企画をかましてくれました。なんと艀の中で水辺の生活がテーマの映画鑑賞会をフィルムで行うというもの。水辺文化、船文化、映画好きにはたまらない企画。万難を排して一人参加した。言うまでもなく法整備や護岸管理が行き届いた都市の水辺では船の係留ってのは極めて困難。今回もいわゆる既得権のある水面でひっそりと仲間内のクチコミのみで開催。

この船の上の映画会、今回はじめての企画とのこと。「泥の河」という昭和31年朝鮮戦争特需に湧く大阪安治川の河口で港湾労働者向けの食堂を営む家族と、いつの間にか河向うに住みついた家船の住人との交流を描いた映画。公開は1981年、原作は宮本輝が1977年に発表したもの。ネット情報によると撮影は名古屋の中川運河で行われたらしい。撮影当時の中川運河はまだこんな昭和な風景がしっかり残っていたのだろうか?映画の内容についてはあえて書かないが、艀のごとく重く悲哀に満ちた映画であった。河スレスレに建つ貧しい食堂を営む家族とそれより貧しい母子家庭の川を介したつかの間の交流。陸上での安定した生活に憧れながらもいつしか水上での現実味のない生活から抜け出せなくなり、都市の水辺を点々と漂流する売春を生業とする船上生活者。ラストひっそりとポンポン船に曳航され去っていく家船の姿があまりにせつない。
なぜか黒沢明の「どですかでん」を思い出した。

この映画簡単には立ち入れない川のもつ異界性について随所で象徴的に描かれており見事な作品である。小栗康平初監督の作品らしいがこんな完成度の高い映画が処女作とはね。
水上学校の昭和史」という本に当時艀に家族ごと住み込む艀業者の生活がリアルに書かれているが、当たり前だがみんな陸での生活にあこがれていたようだ。水も電気も使えないばかりか、学校から帰ってきたら家ごといなくなってたりするんだからね。携帯電話もメールもない時代だからたまらんわな。当時はインフラに繋がっていることが何より価値のあった時代だったんだね。それが昨今の急激な情報インフラのモバイル化でノマドだのモバイルハウスなど、自立再生エネルギーシステムの小型化で船上生活は今や都市のオルタナティブスペースとしての価値が高まっている。しかし、物理的にはまったく問題ないのだが法規制としては全くNGな状況だ。港湾や河川管理者はいまだ係留船を撤去することに躍起になっている。津波や高潮などの自然環境の厳しい日本では水辺の安全管理という側面からは船に住もうなどとんでもないことなのだ。世界を見渡すと船上生活者は大きく3タイプ存在する。発展途上国では難民や陸上で家を借りる権利を持てない最下層の人々による不法占拠。それと漁業や船事業に携わる人々の既得権利用。先進国ではあえて水上ライフを選択した裕福層。水上スペースのマーケットが合法的に成立しているのだ。
あらゆる都市インフラが整備されている首都圏でこれら船上でのイベントが仲間内での秘密のパーティーを提供する以上の価値とは何かと聞かれれば僕は船の係留による水面利用の可能性を具体的に提示する機会であると思うのだが、合法化にはまだまだ先は長そうだ。逆に管理が行き届きお膳立てされた水辺のスペースではこれほどの盛り上がりは出せないだろう。パブリックスペースの在り方について議論する場としては実に象徴的な場である。水辺の文化的活動はおそらくこのようなグレーゾーン(黒?)がもっとも向いている、クリーンな場では育たないような気がしてならない。根拠は無いが・・・。

余談だが、川の対岸映画といえば1999年公開の中国映画に「沈む街」という映画がある。長江の三峡ダム建設に伴い沈む見捨てられた街の船舶信号員と対岸のホテル従業員の女の話。淡々とした映像とシナリオだが急激な経済成長の中、崩れゆくモラルとスレスレに保つ人間的感情が強烈な印象のある映画だった。もちろん中国国内では未公開である。水辺関連の映画だけを企画というのも楽しいだろうな。またひっそりと開催してもらいたい。
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by canalscape | 2013-12-23 12:49 | 書籍・映画・イベント
2011年 05月 16日

横浜水辺のルールづくりに向けて

先日、BankART school「大岡川を往く」第4回として、元横浜国立大学 副学長 来生新先生の講義が開催された。来生先生は法律の専門家であり元々は海洋法をご専門にされていたようだ。近年は産業変革により港湾の役割が変化しているにも関わらず、法律やローカルルールが追従できていない状況に疑問を感じ、法律・ルールづくりという立場から「開かれた港」へするべく活動を始められている。法律の専門家というと格式ばっていてクリエイティブな活動になり得ないのではとの危惧もあると思うが、氏の現状認識はじつに的確であり、変えてゆくべき問題点についても僕らとほぼ同意見であることに驚いた。
具体的な活動手法としては一般社団法人「横浜水辺のまちづくり協議会」を発足させ港湾事業者、港湾管理者、学識者、ジャーナリスト、NPOをボードメンバーとし、市民の水辺利用を促進させる際のプラットフォームを構築することを目指している。
港湾は産業構造の変革に伴い、事業用地から公園、生活街区などに転換しつつあるのはご存じの通りである。水面利用に関しても、業務船利用は圧倒的に少なくなり、水上バスの他レストラン船、屋形船などのレジャー船が航行するのみとなり、利用率が低くなっている。にも関わらず、市民利用をけん制し、事業者が独占的に水面利用している現実はなぜなのか?
水面航行は原則自由であり、カヤックその他の市民による水面利用は法的にはなんの問題も無いはずである。しかしながらボートを降ろしたり乗降するための桟橋や護岸がほぼ皆無に近いため、現実的には水面を自由に航行するに至らないという状況が正確な解釈ではないだろうか?
この水面と陸とをつなぐ水際の空間・施設を今後開放し、自由な利用を促進していけるか否かが実質的に市民が港を利用できるか否かにかかってくる。そのためには、港湾事業者、港湾管理者、市民利用者の3者による協議が欠かせないのだが、そのような場がそもそも存在していなかった。
そのような観点から「水辺のまちづくり協議会」のようなオープンな場が設立された意義は大変大きいのだと思う。この試みはまだ始まったばかりであり、今後どのような問題が見えてくるのか未知数であるが、「ルールづくり」という法律的見地からのアプローチは具体的に諸問題を解決してゆく強力な手法となってゆく予感がする。BPAとしてもこのような協議会にプレイヤーとして参加し、より具体的な港の使い方を提示していけたらと考えている。
この講義の記録はスクール参加者でありBPAの良き理解者であるzaikabouさんのレポートが客観的かつ簡潔にまとめられているので一読することをお勧めする。
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by canalscape | 2011-05-16 02:27 | 書籍・映画・イベント
2011年 05月 16日

「にっぽんの客船 タイムトリップ展」を見た

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先日、銀座INAXギャラリーにて「にっぽんの客船 タイムトリップ展」を見た
先般の日本郵船の「船→建築 ル・コルビュジェがめざしたもの」展に続く戦前の客船設計からデザイン全般にもたらした功績を読み解くという趣旨。突然レトロ客船ブームですね。

大阪商船(現商船三井)の「あるぜんちな丸」、東京湾汽船(現東海汽船)の「橘丸」を中心に戦前の客船を紹介し、日本独自の客船造りへの過程を検証。
村野藤吾のホテルライクな内装デザインも紹介されています。当時は内装デザイナーに建築家が起用されていたようですね。
展示は、客船模型、設計図、当時の客船旅行ポスターなど多岐にわたり展示されているが、今回特に充実しているのはINAX出版のブックレット1500円。当時の写真とその空間の解説などの他、航路ごとの解説や造船に関わった建築家についての解説、インタビューなど多岐にわたる視点から編集されている。このブックレットだけでも一読する価値はありますね。特に村野藤吾、松田軍平他の当時客船デザインに関わった建築家のエピソードや建築と客船の設計アプローチの違いなど興味深い記事であった。そのほか、建築家 岡部憲明がレンゾ・ピアノのもとで現代の客船「クラウン・プリンセス」をデザインした時のインタビューなども興味深かったです。

ただ、五十嵐太郎さんによる「船→建築」展と比べると、やや切り口が見えにくいというか、キュレーションの鮮やかさは無かったかな・・・。というか、あの展示が冴え過ぎていたのだと改めて思った次第。

銀座INAXギャラリーで5/21まで。
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by canalscape | 2011-05-16 00:29 | 書籍・映画・イベント
2011年 02月 08日

映画 180° SOUTH 

f0206739_242547.jpg先日、渋谷のパルコⅢで「180° SOUTH」を観た。Patagonia の創業者 イヴォン・シュイナードと THE NORTH FACE の創業者 タグ・トンプキンズが1968年にチリのパタゴニアの山を目指し、VANに登山道具とサーフボードを載せ旅したまるでエンドレス・サマーのような映像記録「マウンテン オブ ストーム」をある若い写真家が発掘したことから物語は始まる。彼はこの40年前の記録に感銘を受けトレースすることを試みる。40年の時を経てパタゴニアの環境も大きく変わってしまっている。今回は48feetのセーリングクルーザーにヒッチハイクしサーフボードを持って南を目指すなんとも贅沢な旅。

以下一部ネタバレなのだが、書かずにはいられないので書いちゃおう。
メキシコから船酔いに悩まされながら太平洋を南下。途中でデスマストをしてしまい急遽イースター島に立ち寄り船の修理とサーフィン三昧の日々を過ごす。ガラ空き海でパーフェクトな波を独り占め。まさにLife On Board! 
無事マストを修理し船のホームであるチリ本土に帰港しヨットから下船、またサーフィン三昧。チリって波豊富なのね。そこで漁師からトローラーをチャーターし、いよいよパタゴニアへ。このトローラーが超ステキなんだよね。チラシのこの船です。

現地でイヴォンとタグに合流し海辺でキャンプをし、またまたサーフィンサファリ。イヴォンは70才らしいがまだ波乗ってる。すごいな。夕食はフライで釣った魚とハマグリ?
残り少ない人生の終盤に至ってこんな時間を大切にかみしめたいとイヴォン。かっこいいね。さすが、社員に波がある時は仕事を中断しサーフィンに行くことを奨励している企業の創始者だ。日本法人の鎌倉本社もまったく同様のスピリッツだそうな。こんなことしてるから商品は高いのだろうが、皆この夢のようなビジョンを支持し高い商品を買うのだろう。売り上げを伸ばすのではなく、適正な利益を確保。人件費が高くても地元の従業員を雇い、ライフワークを第一に優先させ、高くてもオーガニックな素材を使用し、最高の機能と品質の商品を送り出す。そして利益の1%を環境保護団体に寄付。

これが本当のブランディングだ、サスティナブルだ、企業ビジョンだ、素晴らしい!

実際、あんなに高くてデザインもいまいちなのにお店はいつも混んでるし、映画館も驚くほどたくさん若い人や、子供連れの同年代が来てたな。内容は淡々としてるし子供には退屈な映画だったと思うが、親の意気込みだろうか?世界進出で頭がいっぱいの日本の企業も大いに参考にするべきと思うのだが・・・。ひたすらマーケットを追っかけてるだけでは絶対社員やその家族、母国は幸せになれないと思うな。今リーダーにもっとも求められているのはどんなビジョンを示せるかだと思うのだが、見事なほど提示できていない。そういえば昔、行き先のわからない船に同乗する映画があったな。コッポラの「地獄の黙示録」だ。まさに恐怖だ(笑)

ドボク好きとしては反応に困るのだが、話の中で海沿いに開発されて汚水を垂れ流すプラント工場や渓谷に計画されている多数のダムの話などがやはり取り上げられている。グローバル企業の辺境の地への進出で、代々そこに住むマイノリティーの生活が無残に変貌していってしまうことについて強いメッセージを発信している。起業で成功したタグは自身でも加担してしまっている大量消費社会に見切りをつけ、会社を売却しその私財で開発業者が進出する前に土地を購入し、公園化する壮大なプロジェクトを実行しているらしい。焼け石に水のような行為だがあきらめないところがすごすぎる。

f0206739_2483237.jpg1968年当時まだ無名だったイヴォンとタグはこのパタゴニアへの旅がきっかけでそれぞれ起業することを決心したという。今見るとまさにレジェンド的記録となっているようだ。Mountain of Storms DVDで購入出来るそうなので、ぜひ見てみよう。鎌倉パタゴニアでTシャツ買った時に店員さんも絶賛してた。

最後に、一行は念願のパタゴニアの岩山にアタックするのだが、船のマストトラブルでスケジュールが遅れ季節が悪くなってしまった。これ以上は危険があるため山頂を目前にし途中で引き返すという残念な結果に。

道を間違ったと思ったらいつでも180°ターンして軌道修正すればいいんだよとイヴォン。
皆わかっているはずなのにそのまま進もうとしてしまうと。
僕自身の問題も含めてそんな「問題の先送り」は日常のいたるところに存在している。

状況を良く見極め、勇気をもって決断、行動していかなくては。
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by canalscape | 2011-02-08 02:59 | 書籍・映画・イベント
2011年 02月 06日

「船→建築 ル・コルビュジェがめざしたもの」を見た

f0206739_22212680.jpg久々blog更新。すでに若干古い話だがまだまだ開催中なのでご紹介。
去年の年末に横浜の日本郵船歴史博物館で開催されている「船→建築 ル・コルビュジェがめざしたもの」を見に行ってきた。船好き、建築好きにとっては何が何でも見逃せない。建築評論家 五十嵐太郎さんの監修で、あの日本郵船旧本社を転用した歴史博物館での開催。

本展では客船のデザインが、建築の合理性を提唱した近代建築のプランやデザインに与えた影響を丹念に探り出しフューチャーしている。コルビュジェだけでなく、山田守などの日本を代表する近代建築家への影響も述べられており大変説得力のあるものであった。建築は意匠がある程度自由に選択できるゆえに純粋に航行する船としての機能とバランスの必然性の結果である客船様式に既存の建築様式から飛躍するよりどころを求めたのは自然な成り行きであるように思う。
一部ややこじつけ的な比較もあったが、屋上デッキ、煙突、白い塗層、窓、手すり、タラップなど建築ボキャブラリーごとに比較分析されているところがしびれますね。なんだか大山顕さんの「団地の見究」の分析みたいだ。団地もインフラとしての合理性がベースにあるからかどことなく船っぽいんだよね。ボリュームも横長板状であることや白い塗装であることも要因かな?

どうでもよい話だが、思い起こすと僕も初めてのプラモ体験はタミヤの戦艦陸奥、夏休みの工作は木工でノルマンディーもどきを作ってたっけな。娘がプラモを作ってみたいというので買ってやったのも偶然にも日本郵船 新田丸だ。氷川丸の姉妹船ですごく素敵なシルエット。
建築設計を職業に選んだことと子供の頃の船への憧れはとてもダイレクトに繋がっているのだと改めて認識した。そういえば昔の戦艦と工場って萌えポイント近くないですか?今の自分の趣向と子供の頃の趣向はあまり違っていないようだな。


さて、渡り廊下を通過して奥の展示室に行くと壁紙がセイムスケールの船の立面図で埋め尽くされているすごい展示室がある。船好きはこの壁紙見てるだけで30分は楽しめる。
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そしてコンクリート船を転用した救世軍宿泊所の貴重な映像記録が。恥ずかしながらコルビュジェが船の影響を受けていたのは知っていたが、こんなことやっていたとは知りませんでしたね。だいたいコンクリートで船ってすごいね。軽量コンクリートなんてなかった時代でしょ。ちゃんと浮くんだな、しかも90年もだぜ!

セーヌ川はバトファーというエリアに水上ヴィレッジがあり、クラブやギャラリー、事務所、カフェなどに使われており水上空間の文化が根付いているようですね。うらやましい。

横浜や東京にも戦後の住宅不足時には艀が住宅に使われていたようです。特に艀業に従事していた人々は家族で艀の船首または後尾の4.5帖ほどの船室に住み暮らしていたそうだ。
艀住まいの子供たちは家が常に移動しているという特殊な住環境のため普通の学校には通えず、水上学校というところに通ったそうだ。当時の水上生活者の様子は「水上学校の昭和史」に詳しく書かれています。今でも横浜の中村川には2隻の600tバージが住居として現役稼働している。
一隻は完全な住居、もう一隻は簡易宿泊所でその名も「北斗星」。豪華寝台特急北斗星とは対照的なスペースだな。当然日本では既得権によって黙認されているだけで、新規の設置はあり得ません。

そんなことに思いを巡らしながら気が付いたら閉館時間に。完全に意識がトリップしてしまった企画展でした。常設展も船好き港湾好きには見ごたえ十分。山下公園に係留されている氷川丸の内覧チケットパックもあるので、その気になれば軽く半日楽しめますね。こちらは建築ボキャブラリーであるアールデコを内装に取り入れた客船氷川丸。とても素敵な船です。
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by canalscape | 2011-02-06 22:53 | 書籍・映画・イベント
2008年 11月 14日

on your body を見た。

f0206739_165971.jpg今日は仕事のキリが良かったため、東京都写真美術館で開催中の日本の新進作家展 VOL.7 オン・ユア・ボディーに行ってきた。
BPA墨屋の紹介でこないだの京浜運河工場クルーズにも参加してくれた写真家の高橋ジュンコさんが出展している。木曜と金曜は20時まで開いてるのでサラリーマンにはありがたい。
本企画は女性作家ばかり6人が出展している。澤田知子の写真は非常にわかりやすく意図が理解できるが、その他の作家は正直僕のような素人にはなかなか解かりづらいものだった。その中で、高橋さんのビデオ作品TOKYO MIDはとても気がかりなメタファーに満ちている。都市のスクラップアンドビルドが続き、パワフルでスピーディーな経済活動が展開されているビジネス街の都市風景が映し出されている。混沌とした都市風景と目まぐるしく変化し続けるアクティビティーの中に、静止した女性の身体が写し出されている。本来都市は人間によって人間のために発展してきたはずなのだが、もはやコントロール不能のモンスターか第2の自然のように感じる時がある。非人間的なスケールとスピードで休むことなく活動し続ける都市のなかで、彼女の身体は奇跡的に都市の流れに翻弄されつつも存在している。何かタイミングがずれると、あっという間に流されてしまいそうな危うさを感じた。対象が静止することで周辺の環境がいかに流動的でノイズに溢れているかが対比的にクローズアップしてくる。ここに映し出されている日常的都市風景は動画のせいか、ジャンクションや工場のような美しく、癒されるものとは違う。何か神経を苛立たせ圧倒するような制御不能な都市風景だ。超高層の工事現場のクレーン。渋滞する首都高。大量の人や車が行きかうスクランブル。圧迫され存在を消されそうな高架下の日本橋川。都市の隙間にかろうじて生き延びる河川と身体という自然。
ノイズにまみれた都市に翻弄され、抑圧されながらも共存せざるをえない現実と、それでもしたたかに生きていける身体の強さを感じた。作者の本意は不明だが、僕はそう感じた。
余談だが、高橋さんの工場クルーズのレポート添付しておきます。
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by canalscape | 2008-11-14 19:55 | 書籍・映画・イベント
2008年 11月 09日

横浜クリエイティブシティーシンポジウム2008に行ってきた

横浜市創造都市事業本部主催のシンポジウムに行ってきた。お題は、「創造都市のこれまでとこれから」と大風呂敷だ。僕は分科会2の「拠点からまちへ」というまちづくり系の分科会を聴講。午前、午後の計6時間にも渡るシンポジウムだ。僕は寝坊して11時から聴講。内容は都市資産活用による新たなる展開と戦略についてセッションしていた。ここでも東京同様、今後は新しいスタイルのアーバンツーリズムを模索しなくてはならない。新たなコンテンツの掘り起こしや、昔からあるが意外と知られていない都市資産がまだまだあるはず。それらを、アートイベントを介して認知していこうという話であったかと思う。それにはまずホストとなる地元の住人がそれらを認識している必要があるし、各自がクリエイティブな働きかけをしていかなければならない、また横浜を拠点に活動制作しているクリエイターが増えていかないといかんなどというような話であったかと思う。また、ツーリズムを産業として育てるには横浜で宿泊してもらわなければならないし、それにはナイトライフを充実させないと魅力薄だなどごもっともなお話も。まあ、何処の都市も大方こんなような議論が昨今の主流であるかと思うが、低成長時代の都市の特徴づけって、大方それしかないのだろうか?横浜で今クリアにしなくてはならないことは何を都市資産ととらえ、コンテンツを組みどのように運営してゆくのかというかなり具体的な仕組みの話のはずだが・・・。横浜はコンテンツが豊富なため、なかなか絞れないのでしょうか。もちろん、水面利用や近代化遺産の活用なども話に出ていたが、具体的な方策に触れられることは無かった。総論共感できるが、もう少し掘り下げた議論が聞きたかった。
ところで、黄金町とNYKを結ぶ水上タクシーに人が乗っているのをあまり見かけないとの発言がどなたかが言っていたが、あの短いコースの中にはかなりの景観コンテンツがある。しかしながら、僕が乗った時もそれらのガイドが一切されていなかったし、質問しても何も答えがなかった。実にもったいないことである。このセッションを聞いて、大山一派がやっているような景観価値を発見しエンタメ化する行為は横浜でもかなり有効なのではないかと、改めて感じた。なにも仰々しくアートを制作しなくても、カメラとWEBで誰もが気軽に場合によってはアートを超える驚きを発信できるのだから。


f0206739_110116.jpg昼食を挟んで、メンバーを入れ替えて午後の部へ。テーマはずばり「港湾都市横浜の今後」だ。パネラーにBPA発足当初からお世話になっている国土交通省港湾局の難波課長が参加されている。横浜の港湾活性化について以前より関わっておられ、市民の水面利用への理解はおそらく国交省の中では突出している。個人の趣味の範囲を超え、役人として水面や水辺のアート活動などをサポートしてくれる方は本当に少ないのが現実だ。さらに横浜で3代にわたり港湾荷役業、倉庫業、艀業などを営み、現在では本牧の巨大コンテナヤードも運営している藤木企業から藤木横浜港運協会副会長が参加している。正真正銘のハマのゴットファーザーである。このような場に出てくることは珍しいのではないか?その他4名は横浜ではお馴染みの大学教授。僕の今回の興味は、港湾の今後について官と民を代表するお二方がどのような話をされるかである。物事を具現化してゆくのはやはり民間企業であり、彼らがどのような事業を仕込み運営し、官がどのようなルールやジャッジを下すかが焦点となると僕は思う。藤木さんの関連会社にはタイクーンというLOFTをリノベーションしたレストランがあり、東京湾でも数少ない、ビジターボートが係留できる民間のスポットがある。また、赤煉瓦倉庫横水面でのフローティングヨットショーなど通常の法規制の中ではありえない企画を実施しており、その他水上タクシーの提唱など新しいスタイルの港湾利用を提唱実行している数少ない事業家であると思う。その他、都市交通の専門家である羽藤先生のお話も明快で興味深いものであった。移動願望は人間の本能に根ざしている。移動するアート。インナーハーバーの新たなシークエンスの発見。など興味深いキーワードに溢れていた。最近の若年層は購買意欲だけでなく移動意欲も減退している、IT化の弊害かというのも引っかかる。
さて、難波氏からは役人らしく横浜港湾事業の歴史と現状についてお話があり、港の構造変革や横浜市の税収の依存度が依然として港湾事業からが高く、港湾なくして横浜は語れないなどの素晴らしいレクチャーがあった。世界の港湾事業の主流はコンテナ事業にあり、コンテナ船はどんどん大型化している。またそれに伴い巨大船が着岸できる大深度の埠頭が必要で、コンテナヤードも徐々に周辺に広がっている。現在横浜で最新かつ最深のヤードは南本牧埠頭の水深25mで全長400mの巨大船が着岸できるとのこと。ここはまさにBPA企画の横浜キャナルクルーズのコース②で廻った場所であり、景観コンテンツとしても非常に面白いエリアである。逆にインナーハーバーは港湾事業としての利用価値は低くなっており、現状レストラン船や水上バス以外はほとんど船の航行が無いエリアとなっており活気に乏しいとの指摘があった。(前にも書いたが、クルーザーで遊びに行って着岸出来るところがほとんど無いのですよ。)最後に国交省の防災フロートをアートイベントに貸し出した事例を紹介。今後も防災等の名目で設置されつつある港湾施設を開放できるよう努力したいとのお話であった。


f0206739_1104328.jpg次に藤木氏のお話。特にPPTなどはなく、スピーチのみで港湾事業の変革により、インナーハーバーの事業転換も必要なのは重々理解しており、様々な提案をしてきた。しかしながら、ご自身のお父上をはじめとした高齢化している港湾業界の重鎮方の意識の違いや依然として変わらない厳しい法規制について言及されており、世界の港湾カルチャーに比べて大きく後れをとっている大きな要因としていた。インナーハーバーについては、事業の収益にはならないが、東京には真似できないヨコハマ港湾文化としての活用を積極的に手掛けたい。オーストラリアの港湾でも事業をしているが、あちらの役人は事業提案に対してこうすれば実現できると前向きにアドバイスをしてくれるが、日本では基本的に後ろ向きな対応しかいただけないとのこと。レベルが違うが、BPAがこの4年間で強く感じていることも同様である。水辺は既得権や複雑な利権が絡み合っていたり、行政の縦割り化も強く、一歩水面に踏み出せばすかさず何処かから警告の笛を吹かれるという感じである。いくら横浜市や国交省港湾局が許可しても、運輸局がダメなら成立しないのである。
2005年のトリエンナーレ以来水面利用をしてきた経験から感じることは、今後運輸局管轄の旅客船に関わる法規制を緩和していかない限りインナーハーバーの活性化はありえないと素人ながらに思う。しかしこのハードルは高く、水面利用に特化した研究会等設置しないと進展しないのではと感じた。今回のクルーズ企画で感じたのだが、水辺のコンテンツは現状でもかなり豊富にあるし、まだ少数だが確実な需要があると強く感じた。あとは、法規制の緩和があればいくらでも水上価値の提案はできると思うのだが。
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by canalscape | 2008-11-09 19:50 | 書籍・映画・イベント
2008年 10月 12日

建築夜学校へ行ってきた(続き)

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前回の続編です。時間が経ってしまうと記憶が飛びますね(笑)
今日は、ドボクとケンチクの萌えどころの違いについての感想です。前回ちょっと触れたドボクの刺客とはもちろん大山総裁のことだ。団地芸人の大山ですと自己紹介していた(爆笑)。土木と建築の融合についての関心が高いとはいえ、学会でドボクを呼んでしまうとは主催者も勇気あるよね。というより、団地とマンションの違いについて議論したかったのか?最近の総裁の勢いに飛びついてしまったのか?いまいち趣旨が理解できないのだが違った意味で面白かったのは確か。
大山総裁は主題のタワーマンションのことなどどこ吹く風で、いつもの調子?で、団地についてアツーく語り、ドボクの楽しさ、偉大さについて紹介し2時間でも3時間でも語りそうな勢いであった。300人弱の観衆を前にしかも完璧なアウェーだ。大した心臓だ。十分にドボクの勢いが感じられ、総裁の称号に相応しいプレゼンであったかと思う。この異様なテンションに引っ張られ、次のパネラー日建山梨氏は僕は「工学萌え」と自己紹介していた。その次の鹿島北氏は「美学萌え」と続いた。日建の山梨さんは作家性より工学に基づくシステムの商品化に関心があるようなことを強調していた。僕には最近の作品は作家性を意識しているように見えるのだが・・・。対して、ゼネコンの北さんは商品の中にも建築家の美学を徹底させていきたいと、正統派なスタンスを。悪く言うと既存の建築家象に固執している古いタイプにも見える。デザインもも、ミースや昔のSOMのようなモダニズムの原点と言えるようなスタイルを徹底的にミニマルに追及している。しかし時代に迎合することなく、ここまでブレずにやっていると、美学というフレーズも臭くならない。単純に建築が最も美しかった時代をリスペクトして何が悪いとでもいえる潔さを感じる。その他いろいろ思うところがあったが割愛。


f0206739_117277.jpg全員のプレゼンが終わりディスカッションに。主題であるタワーマンション。マンションの商品性について議論。しばらく黙って聞いていた大山総裁。話を振られると、僕はタワーマンションには全く萌えませんねと一刀両断。それは見識の幅が狭くていかんと東氏。めげずに僕はエビちゃんのようにばっちりスタイリッシュに外見を作っているものには萌えないんです。もっと素の部分とか、誰からも注目されない、いじめられっこ的なものに興味があると。それに対して美学萌えの北氏から強烈な突っ込みが。そんなこと言ったって、そのエンターテイメントなしゃべりも好きだけど、あなたの写真は十分美しいし見られることを十分意識しているではないかと美への賞賛を。まったく爆笑である。どこまでも総裁ペースだ。まだまだめげずにドボクの萌えるポイントをアツく語る。建築の美などとるに足らんと言い切った。東氏が萌の話から美の価値観に話を整理。その後ドボクはインフラでありストックである。ケンチクはフローだなどどうでも良い議論に。
今の超高層って高強度コンクリートを使っていて軽く100年はもつんですよ。むしろそんな土木的な耐用年数をもったスケルトンがわずか、1年ほどの設計期間で(一部の再開発を除いて)、街区や景観の議論がないまま、各デベロッパーによって無調整に進められ、林立している現実。日本での超高層の解体実績は鹿島本社のだるま落とし解体しか存在しないこと、要はタワーって一度建てたら壊すのって難問なのよという議論になってほしかったんだけどな。


f0206739_1173518.jpgところで、僕は大山氏のタワーマンションには萌えないというのがどうも信じられん。東京湾岸の経済論理によって自然発生的に林立した超高層群の景観って工場萌えに近いものを感じるのだが・・・。タワー単体と団地萌えとの比較で話が進んだからそう言ったのか?タワーを群として捉え、工場の萌えどころと比較すれば面白い議論になったと思うのだが。タワーを群で捕らえた摩天楼って、昔から熱烈なマニアがいたし、一般的にも世界的にも萌えの対象であったと思う。NYのWTCが911で崩壊した時、高さを追求する時代は終わるだろうと一部メディアで書かれていた。しかし今でも、世界中で摩天楼への萌は続いている。タワーマンションが圧倒的な人気を誇るのも、この人類共通の高さ萌えが根本にあるからだと思うのだが、その議論が全くされなかったのは残念だ。
アムスの有名な水際長屋、ボルネオスポールンブルグは当初タワーが検討されていたらしい。しかしそこはさすがオランダ、知的にエキサイティングに低層高密度でまとめてあります。この差はいったいどこにあるのだろうか?
主催者の藤村さん確かオランダ留学経験あるのではなかったか?
もう少し積極的にリードしてほしかったなー。
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by canalscape | 2008-10-12 19:02 | 書籍・映画・イベント
2008年 10月 05日

建築夜学校へ行ってきた

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何年振りかに建築会館での建築夜学校に行ってみた。なんで今さら?テーマが学会らしくないタワーマンションであったこと。パネリストに組織事務所のアーキテクト入っていたこと。そして土木ではなく「ドボク」からの刺客が招聘されていることが興味深く聴講させていただいた。
ご存じの通り、東京湾岸は見事にタワーマンションが林立しなんともエキサイティングな湾岸風景を形成している。もともと工場地帯であり、大形の敷地が売買しやすく、先住人も少ないため、大型タワーマンションが成立しやすい。また眺望もよく都心に近いなどの立地条件のほか小泉内閣の規制緩和による容積割増・超高層誘導など政策的な追い風も加わり、湾岸戦争といわれるほどの建設ラッシュが起こった。結果わずか6年ほどの間に劇的に人口バランスと湾岸風景を変えてしまった。僕らがBPAなどという都市水面の活動を始めたきっかけも実はそこにあるのだ。湾岸タワーマンションは芝浦などのLOFTカルチャーを除けば、まったく都市文化のない場所に出現している。最近は徐々に整いつつあるが都市インフラも不十分。ましてや地域コミュニティーなど皆無のエリアである。このような従来の都市文化から切り離されている運河の街に、「葉山の海の家」のような、気軽で解放的なコミュニティースポットをバージ船を転用した水上ラウンジにて創っていきたいというのがそもそものモチベーションであった。そのような理由で僕にとっては大変興味深いテーマであった。


f0206739_121947.jpgさらに興味深い事は、従来パネリストに呼ばれることが少ない大組織の設計者が入っていること。タワーマンションはデベロッパー主導の元、大組織型の設計事務所やゼネコンが設計し、個人商店型の建築家事務所は、インフィルである住戸プランやインテリア、または外装デザインのみを依頼されているという棲み分けがされているのだ。タワーマンションの規模というのは巨大で、エンジニアリング、法規制、なども一般の建築とは違っていることやリスクの大きさを考えると、大組織に任せざるをへない現実がある。メディアを賑わせている建築家に表層的なデザインを担当いただき、広告にて大々的にアピール、(意地悪く見ると)販売促進に利用。エンジニアリングとリスクは組織に担保させるという構図がメジャーであり、コアコンセプトはデベロッパーや広告代理店などが握ってしまうことも多いのだ。そういう意味では、今の東京の景観に影響力があるのはデベロッパーであり、建築家はカヤの外であるといっても過言ではないと思う。
そのような固定化した日本の現実があり、そうではない脅威的実績をお持ちの迫さんが呼ばれているのではと思った。一方、今回の組織系のお二方は実は組織型設計業界では有名な方々で、ファサードデザインや内装も一貫して手掛けられており、一般的なタワーマンションとは比較にならないデザインの質を保っている。商品でありながら「建築」の域に達しており、住空間に対する強い意志を感じられるものであると思う。言い換えると、主催者が意図していた住空間の商品化や資本の論理で生成されてゆく象徴としてタワーを語りたいのであればあまり適切な人選ではなかったのかもしれない。もっとマンション職人のような設計者がよかったのではないかとも思う。日建の山梨氏はデザインや作家性よりシステムに関心があると言っていた。設計者はコンセプトやシステムを形にする重責を負っており、要であるのは間違いないのだが、はたして大枠の商品化システムを企画コントロールしうるポジションにいられるものだろうか?野心的で共感はするのですが・・・。
なんか、人選の思惑と話の展開があまりしっくり行かなかったように見えました。疲れたので続きはまた。次回は「ドボク」と「ケンチク」の萌えどころの違いかな(笑)


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by canalscape | 2008-10-05 18:54 | 書籍・映画・イベント
2008年 09月 23日

2冊の都市河川写真集

f0206739_127239.jpg先日仕事のついでに西新宿三井ビルにあるエプソンの写真ギャラリーで開催されている中野正貴個展を見てきた。TOKYO NOBODYで一躍有名になった作家だ。その後も「東京窓景」など独自の視線で東京を撮り続けている。最新作は今年4月に発売されたTOKYO FLOAT。東京の都市河川をマニアックに撮りまっくっている。今回の個展はこれら3つの写真集から抜粋して展示し、新たな東京を表現している。筆者はもちろんTOKYO FLOAT狙い。写真集も購入した。


f0206739_1274676.jpg最近もう一人若手写真家で気になる作家がいる。77年生まれの石塚元太良INNER PASSAGEというこれまた東京の都市河川ばかりを撮った写真集がブレイクしている。前回はPIPELINE ALASKAで一躍脚光を浴びたようだ。
この写真、カヤックから4×5で撮影したらしい。時にはカメラごと転覆したことあったようだ。大変な取り組み様である。


どちらの写真も被写体や撮影ポイントは似通っており、水面への視線が極めてマニアックである。ほぼ同時期に世代の違う写真家がこのテーマに取り組んでいるのが興味深い。
去年あたりから東京の都市河川クルーズもかなり活発に活動し始めた。身近な場所で気軽に別世界体験ができるサービスが徐々にできつつある。横浜にも未発掘の水辺はいくらでもあるのだ。こういうのが大人の遊び場かと思うのだがいかがでしょうか?
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by canalscape | 2008-09-23 18:44 | 書籍・映画・イベント