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2009年 03月 21日

知られざる浦賀ドックの魅力

知られざる浦賀ドックの魅力_f0206739_0123947.jpg
JIA日本建築家協会主催で住友重工㈱浦賀ドックを見学する機会を3月1日に得た。
以前お世話になった東京ワンダーサイトの今村館長もパネラーとして参加されるとのことで、インフォメーションがありお伺いした。工場内を見学後保存活用についてのシンポジウムがあった。横浜でおなじみの北沢先生が横須賀・浦賀の造船ドックの歴史について紹介してくれた。なんと日本最古の本格的石造ドックって、以前横須賀軍港クルーズで紹介した横須賀米軍基地内にあり、現役で稼働しているようなのです。完成は明治4年というから大変驚きだ。周辺に昭和初期に完成した6号までのDry Docksが存在しているとのこと。米軍基地の市民開放日などに拝める可能性があるようだ。空母GWと共にぜひ訪問したいものである。


知られざる浦賀ドックの魅力_f0206739_0131063.jpgさて、会場の浦賀ドックだが明治32年に完成したレンガ積みドックで全長178m幅21m深さ11mある。レンガ積みドックは日本に2例しか実績がないとのこと。このドック用のクレーンも魅力的なのだが、老朽化のためアームが外されているのが残念である。その他周辺にコンクリート製の比較的新しそうなDryDockが2か所ほど設置されている。また、ドックに近接して建っている上屋だが、この内部空間も大変素晴らしい。工場同様、鉄の細やかで生々しいディテールの集積と巨大な空間のコントラストがたまらない。
このドック、浦賀の入り江の最奥部に位置し、軍事施設であったため町に対して閉鎖的に構成されている。浦賀の街は海に接しているのに、この閉鎖的なドックによって水辺を感じることは難かしい状況である。また、造船業の中心が瀬戸内海に移ってからは、工場が廃れていくのと並行して、浦賀の街も過疎化していったようだ。


知られざる浦賀ドックの魅力_f0206739_013299.jpg話が脱線したが、シンポジウムではこの貴重な近代化遺産を再生して過疎化している浦賀の再開発の目玉にするにはどうしたら良いのかというのがテーマ。横須賀市の構想としては、浦賀の町の中心部に位置する住友重工敷地の売却話が出ていたため、ここを再開発し、浦賀の特徴的な入り江形状を有効利用した回遊性のあるウォーターフロント開発を行い、ホテルやコンドミニアム、ヨットハーバー、などのバブルのころよく見たパースを描いていたようだ。しかしながら、昨今の景気悪化や世界的な低成長時代への突入を考慮すると、もはや絵に描いたもちであるのは明白である。そこで、昨今ブームである近代化遺産に現代アートを介入させたプログラムに白羽の矢が立っているのである。造船所を利用したアートイベントの事例は実は世界的にも数多く存在している。有名なところではアムステルダムの造船所を不法占拠していたアーティストたちが勝手に増殖していき、アートビレッジを形成しているNDSM。今は組織化され立派な観光資源となっている事例。国内でも大阪の名村造船所を会場にしたアートイベントの開催等アーティストにとっても大変魅力的な空間であるのは間違いない。あとは、有能なアートプロデューサーを捕まえれば、イベント活用程度なら十分可能だろう。しかしながら、BankARTのような恒常的利用となると相当難易度の高い話となるようだ。これだけ巨大な施設利用となると、メンテナンス・ランニング費用が莫大なものとなる。海と船と工場を愛するBPAとしても大変魅力的な空間である。このまま寝かしておいても仕方ないので、まずは東京からのボートツアーで、海から上陸するドック見学ツアーを開催したいところである。これならまったく設備投資なしで魅力的な企画ができると思うのだが、また例の旅客船業の法規で縛られてしまう。何度も書いているが、本気で舟運や水面利用を活性化させたいのであれば、この法規のハードルを下げるべきと強く思う。いずれにしても、現況住友重工の施設となっている限り、今後どうなってい行くかは未知数である。不況のおかげでマンションや巨大なショッピングセンターが建ち並ぶことは無さそうだ。企業も土地利用の在り方についてパラダイムシフトを迫られている。
こちらに浦賀ドック写真をUPしておきます。

by canalscape | 2009-03-21 23:13 | テクノスケープ


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